Chikar Studio////OKI Information//////////////2002.10.31/////特別編//              ★こんにちは!チカルスタジオより最新のオキ・ウメ子・マレウレウ情報のお届けです ★「OKI Information」の購読を中止されたい方は(http://tonkori.com/contact/index.html)で解除が可能です。 //////////////////////////////////////////////////////////////////// #part2 【浦島太郎の玉手箱 あるいはガラパゴス島】前編 text by OKI        俺は山に登るのが好きだ。人工物が視界に入らないようなところがいい。山 頂で見る夕方の光線は何か超越したものの存在を教えてくれる。    エトロフ島とクナシリ島の間の夜明けの光、変化とは無縁の時間。100年 前いや10000年前と同じ光景。ここは最後のアイヌモシリだと思った。  国境の狭間で人知れず生き残った最後の砦。まだ全てを失ったわけではなかっ たことにやっと気づいた。別に山に登らなくてもよかった。人工物さえなけれ ば。クナシリの北側の材木岩の崖に根を張る黒々、ごつごつした赤蝦夷松。 文 明とは対極の空間。穏やかな気持ちになった。  9月のはじめに対岸のシレトコ(*1)に家族でキャンプに行った。もちろん クナシリを見るためだ。バカな親子だ。あたりまえのようにクナシリ島が沖に あった。見ようによってはただの青い島影。 しかしこの島は漠然と眺めるも のであって、そこは行ってみたいなどと考えてはいけないご禁制の島。そこは 一体どうなっているか知りたくてもイマジネーションは遮断される。そんな機 能が発生する場所、国境。家族でごろごろした玉石の海岸に座り双眼鏡で材木 岩のあたりを覗く。刑務所の面会室のようだ。  シレトコは一応国立公園だが、素晴らしい舗装道路が完備されている。シー ズンには一日何百台ものバスと乗用車がシレトコ五湖に向かう。観光は簡単に できる、コンビニのドアを開けるように。開発はまだまだ不十分で大型トラッ クがひっきりなしに行き交う。あわただしい一日だ。世の中にはいろんな人間 がいる。ダムや高速道路といった究極の巨大彫刻作品に全てを託す人もいる。 開発は豊かさと発展のシンボル。奥深い欲望の楽天的な肯定(だから悪いこと をしているなどと考えたこともない)。 俺の考えなどブルトーザーであっと いう間にぺちゃんこだ。  カメラマン、伊藤健次は言った。「道路を作らなければいい。車がなければ 人間はどこにもいけないから」。1年の3分の2を北海道の山で過ごす強者な らではの自然保護の具体案だ。 余談だが伊藤はクナシリ島の土産話に目をラ ンランと輝かせよだれもたれそうな勢いであった。 (*1)知床半島の東側、根室海峡沿岸からはクナシリ島を眺めることができる。 【後編に続く】 =============================*Chikar Studio*==== *お問い合わせ、ご意見、ご要望は下記のメールまでどうぞ        E-MAIL: mail@tonkori.com OKI's WEBSITE: http://www.tonkori.com ==================================================